
2月14日公開の映画『悼む人』に
ついて書いていきます。
この作品の原作は、ベストセラー作家である天童荒太さんの直木賞受賞作『悼む人』です。
縁もゆかりもない不慮の死を遂げた人々を「悼む」ため、全国を旅する主人公。
死者が生前「誰に愛され、誰を愛したか、何をして感謝されていたか。死者の「生きていた姿を覚えておく」という主人公の行為は、
主人公を取り巻く人々の生死、愛憎、罪に対する考え方に影響を与え、それぞれが生死、愛憎、罪に真摯に向き合っていくというストーリーです。
《キャスト》
坂築静人 役(高良健吾さん)
全国を旅し、不慮の死を遂げた人々を悼んでいく。自身にも昔、大好きな人を失った過去がある。
奈義倖世 役(石田ゆり子さん)
愛という執着に囚われて夫を殺すも、その罪に苛まれ続ける女。静人と旅を共にするうちに、惹かれていく。
坂築美汐 役(貫地谷しほりさん)
恋人と別れたあとに、新たな命を授かる静人の妹。
蒔野抗太郎 役(椎名桔平さん)
生からも死からも目を背け偽悪的にふるまい続ける雑誌記者。母を見殺しにした父を憎む。
《あらすじ&ネタバレ》
主人公の坂築静人(高良健吾さん)は、不慮の死を遂げた人々を〈悼む〉ため、日本全国を放浪して回ります。
〈悼む〉とは、亡くなった人の「愛」にまつわる記憶を心に刻みつけることです。
静人は、死者が生前「誰に愛され、誰を愛したか、どんなことをして人に感謝されていたか」その生きている姿を記憶していきます。そのための静人の儀式は、傍からは不可解に思われます。
しかし、この行為によって、彼と関わる様々な人たちが「生」と「愛」に対する考え方が大きく変わります。皆が抱える生きる苦しみが希望に変わっていきます。
週刊誌記者・蒔野抗太郎(椎名桔平さん)は山形のとある事故現場で静人と出会います。
蒔野は、残虐な殺人事件や男女の愛憎関連の記事を得意としていました。蔭ではエログロの蒔野とゆうことで「エグノ」と呼ばれていました。
また、彼が個人的に立ち上げたHPには、全国から寄せられた加害や被害の実体験が満載され、人のあさましさや残虐さ、卑猥さが、際だっていました。
そんな蒔野は、人の善意を信じられなくなり、常に猜疑心の塊と化していました。蒔野には、静人の行動=〈悼み〉が全く理解不能でした。
「そんなことをして一体何になるんだ?」蒔野は静人には何か裏の理由があるのでは勘ぐり、彼の身辺を調べはじめます。
静人は、山形でもう一人、苦悩する女、奈義倖世(石田ゆり子さん)と出会います。彼女は「仏様の生まれ変わり」と言われた善人、夫の甲水朔也をその手で殺害し、
4年の刑期を終えて出獄したところでした。身寄りはなく、行く宛てもない倖世には、さらなる苦しみがありました。
それは殺した夫が亡霊となって、肩口から語りかけてくることです。途方にくれていたところ静人と出会い、夫を殺した事実を告げぬまま、救いを求めて彼の旅に同行することになります。
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一方、横浜にある静人の実家では、母・巡子(大竹しのぶさん)が末期の胃癌と闘っていました。
病院で治療を受けるが、病状が良くならなかったため、自宅でホスピスケアを受けながら死を迎える決意をします。
人の命ということを考えるとドクターものは、はずせませんね。ドクターものなら『DOCTORS3』がおすすめです。
巡子は幼い頃から対人恐怖の気があり、相手の顔を見て話すのが苦手でした。そんな彼女を最後まで支えたいと夫・鷹彦は、会社を辞めて介護に専念します。
静人の妹・美汐も、母の病を知り実家に戻ってくるのですが、やがて妊娠が発覚します。相手は、別れた男でした。実は、静人の「悼む」行為への偏見から別れを切り出されたのでした。
親子ともども傷つき、苦悩しながら、それでも彼らは前を向こうとします。
静人の身辺取材をはじめた蒔野は、その途中、父の愛人から父が死んだことを知らされます。子供の頃から親子の間には確執があり、お互い向き合えないままでした。
結局、葬式には参加することになった蒔野はそこで、今まであえて間をおいていた父の思いに触れ、動揺してしまいます。
蒔野は、これまで行ってきた数々の行いがもとで、ついに命を狙われるはめになってしまいます。
一命を取り留めたものの視力を失った蒔野は、静人の実家を訪れ、そこで静人の〈悼む〉行為に秘められた真実を巡子から聞きます。
それは、静人の大好きだったある人の死に関係していたのでした。今も過去を一人で抱える息子に対して、母・巡子は、ただ「誰かを愛してほしい」と心から願うのでした。
旅を続けていくうちに、静人と倖世はお互いに惹かれていきます。それぞれが、過去に背負った罪の意識から、素直に人を愛することができません。
一方、静人の母・巡子の死期は着実に近づいていきます。家族は、静人を探そうと“悼む人”という情報サイトから、静人にメッセージを発信します。
メッセージを見た静人と倖世は思いがけない行動を取ります。
天童荒太さんが、この作品を作ったきっかけは、9.11のアメリカ同時多発テロ事件で世界中が不条理な死に直面したことから改めて無力感を受けた作者が、
各地で取材しながら亡くなった人を悼んで歩き、悼み日記を3年間記録し、それを元に書き上げたものだそうです。
人はなぜ生まれ、なぜ死ぬのか。不慮の事故や災害で目の前から消えてしまった者に対して誰もが、抱く行き場のない苦しい思いをどうすればいいのか。
その答えは、「誰に愛され、誰を愛したか、どんなことをして人に感謝されていたか」この3つを深く考え、記憶するこで、逃れられない
「死」を、「愛」で永遠の「生」に変えることなのだと、この映画は教えてくれます。静人が死者に向き合い、その愛の記憶をひもとき、呪文のように言葉にし、
祈る姿は、見る人自身の「愛の記憶」を呼び起こし、自身の体験に重ね合わせていくことになります。
本作は、人の心の中を深く考えていくものです。同じように家族の心の絆を深く考えていくドラマ『流星ワゴン』もおすすめです。
《裏 話》
NEVERまとめより高良さんは、デビュー以来「10代後半から20代中頃まで、とにかく死んだり人を殺してしまったりする役が多かったので、
今回、静人のしていることが腑に落ちることがあった。ずっとこの役のために、今まで準備をしてきたのだと思った」そうです。本当に運命的な感じがしますね!
また、この作品は2年前に向井理さんと小西真奈美さんで舞台化されており、その際にもラブシーンが注目されていましたが、映画では、さらに濃厚な描写になるとの事です。
ネット上でも既に、刺激的な内容だが、下品にならず上品さが残る石田さんのラブシーンにも注目が集まっています。
公開が楽しみですね。